最近出来たばかりの駅前のお店で、私達は向かい合った。

「はじめまして、本郷悠里です」
私のことを知っているのかはわからないけれど、呼び出したからには先に名乗ってみる。

「鈴木一華です。それで、ご用件は何でしょう?」
挑んでくるような視線。

「私の事、ご存知ですか?」
「ええ。鷹文の彼女だった人。8年前一緒に事故にあった方ですよね?」
「ええそうです。当時、私は鷹文と付き合っていました。今はあなたと付き合っているんですね?」
つい強い言葉になってしまった。

まるで、私がいじめているみたいだなあと思っていると、しばらくして彼女の表情が少し変わった。

「悠里さんは本郷商事のお嬢さんなんですよね?」

「ええそうです。一華さんは鈴森商事のお嬢さんですよね?」

「悠里さん、私回りくどいのは苦手なのではっきりと申し上げます。今日はなぜ私に会いにいらしたんですか?」

さあどう話を切り出そうと思っている私に、彼女の方から言ってくれた。

「今回の騒動は、一華さんがその気になればすぐにでも解決しますよ」

彼女がどこまで知っているかわからないけれど、はっきりと核心を突いてみる。

「それは・・・」

「鷹文を自由にしていただけませんか?」

そう、私は今日それを言いに来た。

「やめてください。そもそも鷹文は誰のものでもありませんし、私は彼の自由を奪ったつもりはありません」
きっぱりと言われ、一華さんに対する見方が変わっていく。