同期のあいつ

「それで、戻るの?」
「いや戻りたくない」

「そんなことできるの？」

できないからこそ、今の状況になっているのよね。

「できればこのままでいたかったんだがな」
「無理よね、きっと」

そんな事は誰よりも鷹文がわかっているはず。

「そうだな」

「彼女には?」

「いや、話していない」

本当のことを知ったらどうなるのかしら。

「悠里には申し訳ないけれど、俺は8年前に１度死んだんだ。これからの人生は誰にも深く関わらずに生きていこうと決めていた。でもあいつのことだけは諦められなかった。あいつといてもう一度生きてみようと思えたんだ」

まさか鷹文の口から、他の女の話を聞く日が来るなんて。

「彼女のことが好きなのね」
「ああ」

「彼女のために浅井に戻るの?」

「俺が戻らなければ、鈴森が潰れる」

そうね。こうして話していて気づいた。あなたは浅井に戻るべき人なのよ。
浅井の後継者として育てられたんだから。その資質も力もある人。

「悠里、お前には本当に申し訳ないことをした。すまなかった」
テーブルにつくほど頭を下げられた。

「いいわよ今更」
辛い思いをしたのはみんな一緒。今更恨むつもりはない。