「君から浅井鷹文、今は高田鷹文だっけ?彼のことを聞いて、僕も少し調べてみたんだ。同業者でもあるから気になったしね」

ふーん。律也さんらしい。穏やかそうな顔をして抜かりがないタイプ。

「今は国内事業部の営業課長。温厚で人当たりが良くて、仏の髙田なんて言われているけれど、実際はかなりの切れ者。うちの営業も何度も競り負けているらしい」
「へー」

「どういう意味かわかる?」
「いいえ」

鷹文が優秀なことと鈴森が攻撃されていることの接点が見えない。

「浅井が犠牲を払ってでも取り戻したいと思っても不思議ではない人材って事だ」

「えっ?」
思わず息が止りそうになった。

そんなはずはない。浅井のおじさまもおばさまも、鷹文が壊れていくのを側で見ていて誰よりも心を痛めていたんだから。鷹文が望まないことをするはずなんて・・・

「一旦は諦めた息子でも、元気になってみるとまた欲が出た。そんな所じゃないのかなあ」
「嘘よ。そんなはずは・・・」

「悠里さん、人はね、変わるんだよ」

嘘、絶対に嘘。

「私、おばさまに聞いてみるわ」

「やめておきなさい。君が出る話じゃない。それよりも彼に知らせてあげたら」

「鷹文に?」

「そう。彼のことだからもう知っているのかもしれないけれど、1度ご両親と話し合うようにって、勧めてあげた方がいい。もたもたしていると鈴森商事が危ない」
「えっ、そんなに?」

そこまで大きな話なの?

「どうやら浅井は本気らしい。犠牲を払ってでも御曹司を取り戻したいようだからね」

そんなはずはない。
おじさまもおばさまもそんな人じゃない。
でも、鷹文と話してみよう。律也さんがここまで言うからにはきっと何かあるはずだから。