鷹文と再会して1ヶ月。
私の暮らしに大きな変化はない。

鷹文も鈴森商事のお嬢さんとつきあい始めたようだし、潤や私とも何度か飲みに出かけている。
長い間のわだかまりも消え、やっと日常生活に戻って穏やかに暮らせる。
そう思えるようになった。

「隣いい?」

社食で昼食をとっていると、律也さんに声をかけられた。

「ええ、どうぞ」

すでにお昼の時間は過ぎていたためかなりすいていたけれど、断る理由もなくて席を勧めた。

「彼、鈴森に勤めているんだったよね?」
「え?」

あまりにもいきなりで、話が見えない。
彼って・・・鷹文の事よね。

確か、
「探していた人が見つかったんです。それも鈴森に勤めていたなんてびっくり」
つい最近そんな話を律也さんにした気がする。

「そうみたいです」

よりによってうちのライバル会社に勤めなくてもと思ったけれど、鷹文には言わなかった。

「彼、浅井コンツェルンの御曹司なんだよね?」
「ええまあ」

どんなに否定しても、彼が浅井の一人息子であることに変わりはない。

「そうかあ・・・」
ちょっと困ったなって顔をした律也さん。

ん?
「どうしたの?何か気がかりでも?」

なんだか様子がおかしい。

「うん。気がかりがあるんだが・・・」

「何?鈴森商事に関わること?」

「と言うか、彼に関わることかな」

え?

私は食べていた箸を置くと、律也さんに向き直った。