「付き合っていたはずの男がいきなりいなくなって、面食らったわよ」
出来るだけ明るく言う私。

「すまない」
うなだれる鷹文。

「仕方ないわ。それだけのことがあったんだから」

これが私の本音。
突然消えられた寂しさはあるけれど、正直恨む気持ちはない。
彼がどれだけ苦しんでいたかを私は知っているんだから。

「すまない」
何を聞いても同じ言葉を繰り返す。

その苦しみが今さらながら伝わってきて、
「苦労したのね」
鷹文の手に自分の手を重ねた。

「飲みましょう。今夜は8年ぶりの再会を記念して朝まで飲むわよ」
と言いながらグラスを空ける私を、マジマジと見つめる鷹文。

そう言えば、あの頃の私はお酒なんて飲めなかったものね。
でも、働き出して6年。ここ数年は1人で海外と日本を行き来する生活。
仕事をしていれば酒席だってあるわけで、飲めないではやってこられなかった。
鷹文が苦労して変わったように、私も変わったって事。

その後、潤も戻ってきて私達は朝まで飲み続けた。