「はい、どうぞ」
目の前に置かれた社食のランチ。

「ありがとう」

窓際の一角に私達は向き合って座った。
今日のランチは肉じゃがと白身魚のフライか。うん、美味しそう。

「昨日も遅かった?」
「うん」

仕事が残っていて日付が変わるギリギリだった。
でも、父さんも出張中でうるさく言う人がいないから油断してしまったのも事実。

私は一人っ子で姉弟はいないし、体の弱かった母さんも小学校に上がる前に亡くなった。
父さんと祖父母に育てられ不自由は感じなかったけれど、母のいない寂しさはいつも感じていた。
その祖父母も10年前には亡くなり、今は父さんとの2人暮らし。
誰も私の行動を制限する人はいない。
自由気まま、そんな生活に慣れて久しい。

「無理しないでね」

「はい」
素直に返事をした。

今の私にこんな事を言ってくれる人は多くないから、ありがたく聞いておこう。