「なあ一華」
「何?」

「俺は8年前人生を捨てたんだ。もう誰も愛さないと誓った。でも、お前は特別だ」

そう言うと、横抱きにしていた私の体をそっと抱きしめた。

「どんなにあがいても、お前を好きだという気持ちは消えなかった。もがいてもがいて、俺は諦めたんだ。もう一度人を愛してみよう。一華のために本気で生きようと思った」

「うん。私も一緒。何度諦めようとしても鷹文への気持ちは消す事ができなかった」

「浅井へ戻ると決心させてくれたのはお前だ。当然一華も混みで、戻るつもりだった」

え?

「一華、結婚して欲しい。もちろん今すぐでなくていい。仕事を続けてもかまわないし、俺もしばらくは実家ではなくマンションで暮らすつもりだ。今まで通りとはいかないだろうが、できるだけ一華の希望に添いたいと思っている。だから、結婚してくれないか?」
「そんな・・・」

いきなり言われても。
浅井の跡取りとして生きていく鷹文に、私は何の手助けもできないのに。

「俺の側にいるのはイヤ?」
「そんなことはない」

私だって鷹文が好きなんだから。

「じゃあ、OKでいいな」

でも、何か急すぎる。
今までそんなこと言わなかったくせに。

「何かあったの?」
そうとしか思えない。