守口さんと2人の寝室。
とても居心地が悪い。

「私のせいで、すみません」
「いえ」
「今日の予定って、重要なことだったんですよね」
「ええまあ」

なんだか無愛想な人。
お兄ちゃんや香山さんより大人で、意地悪な感じ。
この人が鷹文の秘書か。

「一華さん」

えっ。
いきなり呼ばれて驚いてしまった。

「そう呼んでもかまいませんか?」
「はい」

すごく真面目な顔で見つめられて、ちょっと怖い。

「一華さんは浅井の家に嫁ぐ覚悟がおありですか?」

はあ、いきなり?

「確か、鷹文さんと同い年だとうかがいました」
「ええ」
「結婚を考えられる年齢かと思いますが」

どうお考えですかと、聞かれているらしい。

「私はまだ結婚する気はありません。家庭に入って家族を支えるなんて自信がありませんから」

「では、鷹文さんとはどうするお考えですか?」

「それは・・・」

考えがまとまらないからこんなに悩んでいるわけで。

「鷹文さんが浅井の家に帰られれば、すぐにでも縁談の話が持ち上がる事と思います。その時、どうなさるおつもりですか?」

うっ。上手に急所を突いてくる人。

「その時は」
「その時は?」

「別れるんでしょうかね」
まるで人ごとみたいに言ってしまった。

ハハハ。馬鹿にしたような笑い声。

「そんなことできないとわかっていますよね。鷹文さんはあなた以外の人は考えられないでしょうし、あなたも別れることなんてできないんじゃありませんか?」

「そんなこと」
「ないですか?」

「・・・」
答えられなかった。

その時、
ウ、ウウ、ウウー。
急にお腹が痛み出した。

「どうしました?大丈夫ですか?」

「大丈夫です」

冷や汗を流しながら答えても、

「とても大丈夫には見えません。本当に強情な方ですね」

やっぱりこの人苦手だわ。