トントン。

「鷹文さん」
声をかけ入ってきた男性。

「気がつかれたんですね?」
私に向かって尋ねられ、
「ええ」
返事をした。

この人は?と鷹文に視線を送る。

「秘書だ」

秘書。そうか、鷹文は浅井の跡取りになるんだものね。

「守口と申します」

頭を下げられ、私も起き上がろうとして、

「もう少し寝てろ」
鷹文に止められた。

ブブブ。
守口さんの携帯が鳴り、

「もしもし」慌ただしく部屋を出て行った。

「忙しそうね?」
「そうだな。しばらくは休みもなさそうだ」

やっぱり。

「お前は?」
「え?」
「社長の娘ってバレたんだろ?」
「うん」
「平気か?」

平気なわけないじゃない。

トントン。
再び守口さんが入ってきた。

「鷹文さん、とりあえず今日のスケジュールはキャンセルしました」
「ああ」

私は彼の服の端をつかんで引っ張った。
「私はいいから」

「いいんだ。今日はここにいる」
「でも・・・」

「鷹文さん、スケジュールの調整はしましたので、社長に電話だけ入れて下さい」
「ああ、わかった」

そう言うと、鷹文は出て行った。