そして、向かったのは最上階。
社長室や専務室が並ぶ場所。
昨日もここに来た気がするけれど。

「あら、一華ちゃん」
父さんに会わないようにとコソコソ歩いていると、専務秘書の麗子さんが気付いて声を掛けてくれた。

「こんにちわ」
ふてくされ気味に挨拶をする。

「ご機嫌斜めね」
「まあ」

怒られに来たのがわかっていて、笑顔になんてなれない。

「専務も社長も一華ちゃんの事が心配なのよ」
「・・・」
わかっています。

「フフフ」
おかしそうに笑われた。

「何ですか?」
「いえ・・・専務と同じ顔してるから」
「そりゃあ兄妹ですから」
似ていて当然じゃない。

「そうじゃなくてね、専務も朝からずっと機嫌が悪いのよ。怒った顔が一華ちゃんと一緒」
「・・・すみません」

兄さんの不機嫌の原因はきっと私。
そのせいで、麗子さんの仕事がやりにくくなったんなら申し訳なくて、謝ってしまった。

「いいのよ。それは私の仕事だから。どうぞ、お待ちですよ」
綺麗な笑顔。

促されるまま私は専務室をノックした。