「鈴木さん、そろそろ諦めて下さい。あなたに恨みはありませんが、僕は今夜あなたを抱きます。そうしなくては気が収まりませんから」

ギシッ。
ベットがきしみ、川本さんが私に覆い被さった。

「や、止めてっ」
必死に声を出すけれど、当然誰も来てはくれない。

ビリッ。
着ていたブラウスが破れる。

「お願い止めて。こんなことしても」
誰の得にもならない。そう言いたいのに、唇を塞がれて声に出せない。

ただ涙だけが流れた。

パサッ。
ビリッ。
脱がされたスカートが床に落とされ、ストッキングの破かれる音。

もうダメ。
私はこのまま襲われてしまう。
もう2度と鷹文に会えなくなる。
その時、
ドンドンドン。
乱暴ににドアが叩かれる音がした。

川本さんの動きが止る。

ドンドンドン。
再びドアが叩かれて、

「ったく、誰だよ」

不機嫌そうに体を起こした瞬間、
バンッ。
ドアを蹴破る大きな音と共に、誰かが部屋に入ってきた。

「一華」
それは今一番聞きたかった声。

「タカフミー」
涙でボロボロになりながら、私も名前を呼んだ。

「お、おまえ」
ベットまで駆け寄って来た鷹文が唸った。

次に聞こえてきたのは、
バンッ、ドスッ、バッコンッ。
おそらく川本さんを殴る音。
私には見えなかったけれど、きっとそうだ。

しばらくして、
「鷹文さんもう」
男性の止める声が聞こえた。

「一華。ごめん」

もう一度私の元へ来ると、シーツで私を包みそっと抱いてくれた。

「私こそ・・・ごめん」
涙が止らなくて、それ以上は言葉にならない。

「もう良いから、目をつむっていろ。俺が側にいるから、もう大丈夫だからな」
「うん」

そっと目を閉じると、張り詰めていたものが緩んで、私はそのまま気を失ってしまった。