「鈴木さん、大丈夫ですか?」

朦朧とする意識の中で、優しく声を掛けられた。
でも、大丈夫じゃない。
グルグルと目が回るし、頭だって割れそうに痛い。
これって、絶対にお酒だけではない。きっと、何か飲まされている。

肩と腰に手を回され抱えられるように、私は歩いていた。
居酒屋を出てアスファルトの道路を歩いていたはずなのに、その感覚は硬質な床へと変わり、今は柔らかな絨毯の上。きっと、どこか建物の中。

ガチャン。
ドアを閉める音がして、
ドンッ。
私はベットの上に放り投げられた。

「大丈夫ですか?お水を持ってきましょうか?」

きっと私を酔わせた張本人のはずの川本さんが、心配そうに声を掛ける。

「どうしてこんな事を?」
私は絞り出すような声で聞いた。

だって、さっきまであんなに謝ってくれていたし、とても感じの良い好青年に見えたのに。

「あなたは本当に何もわかってないんですね?」
「それは・・・」
どういう意味ですか?の言葉が続かない。

「あの後部長がどうなったか知っていますか?」

確か会社を解雇されたと聞いた。

「まあね、部長はしかたありません。かなりあくどいことをやっていましたから。でも、そうさせた責任はあなたにもある」

はあぁ?
思わず目を見開いた。

「不満そうですね?」

あの件に関して私は被害者のはず。
今さらこんな目に遭う覚えはない。