「もしもし」
『俺だ』
「せ、専務」

てっきり一華だと思っていた俺は驚いた。

「どうかしましたか?」
『一華と連絡が取れないんだが、何か知っているか?』
「いえ、7時くらいまでは会社にいましたが。電話は?」
『つながらない』

あのバカ、何してるんだ。

「僕の方でも探して見ます」
『忙しいのに、すまない。きっと今日の俺に怒っていると思うんだが・・・無茶するんじゃないかと心配でな』
「わかっています。ああ見えて無鉄砲ですから」
『すまない』
「良いんです。何かわかったら連絡しますから」
『よろしく頼む』

心配そうな専務の声に胸が痛んだ。
ッたく、あいつは何をやっているんだ。
心配させやがって。

「鷹文さん?」
それまで後ろに控えてきた守口が、寄ってきた。

「すまないが、抜けても良いか?」
「ダメだと言ったら諦めていただけますか?」
「いや、それは」
何があっても、俺は一華を探しに行く。

「なら聞かないでください」
不機嫌そうに言われてしまった。

「すまない」

クスッ。

「やめてください。その代わり、私もお供します」
「えっ」
「私はあなたの秘書ですからね。是非その方のお目にかかりたいですし」

「わかった」

これ以上言っても、守口はひかないだろうな。
諦めるしかない。