「オイ、一華」
不意に声を掛けられ、驚いて見ると目の前に鷹文がいた。

「ごめん、どうしたの?」
「どうしたのじゃないだろう。もう7時だぞ。急ぎの仕事がないなら帰れ」
「ああ、うん」

いつの間にそんな時間だったんだ。

「大丈夫か?1人で帰れるか?」
すでにほとんどの人が退社し近くに人がいない為、鷹文の口調はプライベートのもの。

「鷹文は帰らないの?」
「ああ、この後予定があるんだ」
「ふーん」

やっぱり忙しいんだね。

「お前は大丈夫?」
「うん」

本当は全然大丈夫じゃないけれど、鷹文には愚痴れない。
私よりもっと大変なはずだもの。

「気をつけて帰れよ」
「うん」