やはり、フロアの空気は重たかった。
私が戻っても近づいてくるのは小熊くんだけで、みんな遠巻きに見ている。

「はい、これ見積もり」
引き出しにしまっていた見積書を渡すと、
「ああー、良かった」
小熊くんは大げさに喜んで見せた。

「ごめんね、私が持っていたから」
探させてしまったことを謝る。

「良いんです。あの、あんまり気にしないでください。みんな驚いているだけですから」
「うん。ありがとう」

あの小熊くんに心配されるなんてと思いながら、気遣いがうれしかった。
一方、今までなら必ず寄ってきてくれた可憐ちゃんは完全無視を決め込んでいる。
何度か声を掛けようかと思ったけれど、できなかった。

その日一日、ひたすらデスクに向かい時間を過ごした。

一方、午前中会議に呼ばれていた鷹文も、午後にはフロアに顔を出した。

忙しそうにデスクの整理をしていたかと思うと、会議室に籠もって部下1人ずつと面談をし業務の引き継ぎをしている。

何だろう、私1人が蚊帳の外。
疎外感を打ち消すように、私は黙々と雑務を片付けた。