「紅茶を変えましょうか?」
冷めてしまったミルクティーを下げようとする麗子さん。

「いいえ、もう十分です」
「そう、大丈夫?」
「はい」

正直大丈夫と言い切る自信はないけれど、やれることをやるしかない。

「孝太郎もかなりショックを受けていたわ。髙田課長のことはかなりかっていたから」
「そうですか」

てっきり嫌っているんだと思っていた。

「でもね、跡取り息子としての責任を果たしたいって気持ちを聞いて反対できなくなったのよ」

そうだろうな。
お兄ちゃんは人一倍気持ちがわかるはずだから。

「できることなら彼について行きなさいって言いたいところだけれど、そんなに単純な話じゃないのよね?」
「ええ」

浅井に戻った鷹文に、私は何もしてあげられないだろうから。
足手まといになるばっかり。

ブブブ。
メールだ。

あれ?小熊くん。

『部長には止められたんですが、こんな時にすみません。山通の見積もりって持ってますか?急ぎ必要でして、必死に探していますが見つかりません😭』

ビジネスメールのくせに涙の絵文字がいかにも小熊くんらしい。
そしてこの空気を読まない感じも、今時の子だね。

「麗子さん。紅茶ごちそうさまでした。私戻ります」
「本当に大丈夫?」
「はい。私1人逃げているわけにはいきませんから」
「そう。じゃあ頑張って」

麗子さんの笑顔に送られ私は自分の部署へと戻った。