「あ、ここいい?」
トレーを手に高田がやって来た。

「はい、どうぞ」
可憐ちゃんが席を空けてくれて、私の隣に座った。

「あれ、鈴木はそれだけ?」
サラダのみの私を不思議そうに見ている高田。

「食欲なくてね」

昨日あれだけ飲んでしまって、まだムカムカしているんだから、食べられるわけがない。
ん?
高田はてんぷらうどんに小鉢とおいなりさん。
すごい食欲。

「はい」
っと差し出された小皿に入れられたおいなりさん。

「何?」
「サラダだけじゃダメだろう。無理してでも食えよ」

ええー、無理。

「いいよ。本当に食欲ないし」

「ダメ」
「はあ?」

私の向かいに座った可憐ちゃんもジッと見ている。

「どうせ朝飯も食ってないんだろ?」
「ああ。まあ、そうだけど」

「無理してでも食っておけ。午後から山通に行くんだろ?」
「うん」

きっと上司として心配してくれているんだよね。
深い意味はないんだろうけれど、何でこんなにドキドキするんだろう。
普段からよくある光景なのに、私が意識しすぎかな。

だって・・・昨日の高田は格好良かったから。
いつも冷静で感情的になることなんてない高田が、男に見えた。
それもとびきりワイルドで、獣みたいで・・・
ヤダ、思い出してしまうじゃない。

「どうしたんですか?顔が赤いですよ」
可憐ちゃんが首をかしげる。

「そ、そんなことないよ」
動揺しまくった私。

高田の目が『バーカ』と言っている。

ああぁー。
できることなら、昨日に戻ってやり直したい。