「早いですね。ここまで目を通したんですか」

朝、顔を出した瞬間言われ
「ええ、まぁ」
照れてしまった。

「そこまで頭に入れれば充分です。後は私がその都度教えます」
そう言うと書類を片付けだす。

「もう少し見ますよ」
「いえ、奥様も鷹文さんを待っていらっしゃったんです。一緒にいてあげて下さい」

そうか、帰ってからあまり顔を見ていない。

「行ってあげて下さい。これからは私が側におります安心してください」

苦手だった守口さんを頼もしいと感じた

「ありがとうございます」

正直俺だって不安だった。
今更浅井の跡取りに戻る自身なんてない。でも、彼がいてくれれば心強い。

「それから」
守口さんが困ったように俺を見た

「敬語をやめていただいて、守口と呼んでください」
「あ、ああ、はい」

ほらまたと、ニタッと笑われた。
きっとすぐには無理だろう、でも慣れていかないといけないな。