8年ぶりに帰った部屋の机には、山のような書類が置かれていた。

うわー、鬼だな。

これもみんな守口さんの仕業。
一瞬俺を追い出そうとしているんじゃないかと思った。

「失礼します」

ノックもなく入ってきた鬼、じゃない守口さん。

「何度も言いますがこれを全て頭に入れる必要はありません。隆文さんはずっと浅井から離れていたんですから、みんな最初から完璧を求めてはいません」
意地悪く笑う鬼。

こいつはきっとわかっている。こんな言い方をすれば俺が必死になることを。

クソッ、覚えてやるさ。
完璧な跡取りとして振る舞ってやる。

「今日は泊られますか?」
「ええ」
「では、明日また伺います」

守口さんが言うように俺は浅井のことを何も知らない。
今の俺に頼れるのは、守口さんしかいないんだ。

「明日までに目を通しておきます」
「お願いします」
満足そうに出て行った。


その夜、俺はほとんど眠らなかった。
ひたすら資料をめくり頭に叩き込んだ。
感心なことに守口さんの資料は本当によく整理されていて、重要度に合わせていくつにも分けられていた。