「お部屋の方に資料を運んでありますので、目を通しておいてください」
「はい」
「かなりの量になります。すべては無理でも、できるだけ頭に入れておいてください」
「わかりました」
「・・・」
守口さんが俺の方を見ている。
「何か?」
「いえ、随分素直だなって思いまして」
よほど意外らしい。
フー。
俺は大きく息をついた。
「俺なんかよりよっぽど大人な守口さん。一体何が言いたいんですか?先ほどからのあなたの発言には含みがあるように感じます。そんなに気に入らないのなら、俺についてもらわなくても結構。俺の資質について疑念があるのならそのまま親父に忠告してやってください。あなたの言葉なら親父も無視できないでしょうから」
そうしてもらえれば、俺も助かる。
「何も含みなんてありませんよ。鷹文さんこそ、被害者意識が強いんじゃありませんか?世の中全員敵に見えていませんか?それでは人は離れていきますよ」
一番の敵は目の前にいるような気がするんだが。
「大人な上に、この俺の守り役を買ってでた守口さん。短気で、わがままで、浅井のことを何も知らない若造を、どうするつもりですか?」
それが一番聞きたいこと。
「立派な後継者に育てて差し上げます」
「えっ」
マジか。
「私の家は代々浅井本家に仕えてきたんです。父も、祖父も、先代先々代の側にお仕えしました。私はあなたにお仕えするようにと育てられました。浅井に入り、あなたが入社してくるのを」
そこまで言って、守口さんは黙った。
そうか、あの事故さえなければ・・・
「申し訳ありません。余計なことを」
珍しく、守口さんが謝った。
「いいんです。事実は消えませんから。それに、もう逃げないと決めています。どんな現実も受け入れるつもりでいます」
こう言い切れるまで、8年かかった。
「鷹文さん」
感慨深そうに見つめる守口さん。
彼は壊れてしまった俺を知っている。ボロボロのあの頃を。
「一生懸命勤めさせていただきます。よろしくお願いいたします」
守口さんが立ち上がり、深々と頭を下げた。
「こちらこそよろしくお願いします」
.俺も立ち上がって、守口さんの手をとった。
「はい」
「かなりの量になります。すべては無理でも、できるだけ頭に入れておいてください」
「わかりました」
「・・・」
守口さんが俺の方を見ている。
「何か?」
「いえ、随分素直だなって思いまして」
よほど意外らしい。
フー。
俺は大きく息をついた。
「俺なんかよりよっぽど大人な守口さん。一体何が言いたいんですか?先ほどからのあなたの発言には含みがあるように感じます。そんなに気に入らないのなら、俺についてもらわなくても結構。俺の資質について疑念があるのならそのまま親父に忠告してやってください。あなたの言葉なら親父も無視できないでしょうから」
そうしてもらえれば、俺も助かる。
「何も含みなんてありませんよ。鷹文さんこそ、被害者意識が強いんじゃありませんか?世の中全員敵に見えていませんか?それでは人は離れていきますよ」
一番の敵は目の前にいるような気がするんだが。
「大人な上に、この俺の守り役を買ってでた守口さん。短気で、わがままで、浅井のことを何も知らない若造を、どうするつもりですか?」
それが一番聞きたいこと。
「立派な後継者に育てて差し上げます」
「えっ」
マジか。
「私の家は代々浅井本家に仕えてきたんです。父も、祖父も、先代先々代の側にお仕えしました。私はあなたにお仕えするようにと育てられました。浅井に入り、あなたが入社してくるのを」
そこまで言って、守口さんは黙った。
そうか、あの事故さえなければ・・・
「申し訳ありません。余計なことを」
珍しく、守口さんが謝った。
「いいんです。事実は消えませんから。それに、もう逃げないと決めています。どんな現実も受け入れるつもりでいます」
こう言い切れるまで、8年かかった。
「鷹文さん」
感慨深そうに見つめる守口さん。
彼は壊れてしまった俺を知っている。ボロボロのあの頃を。
「一生懸命勤めさせていただきます。よろしくお願いいたします」
守口さんが立ち上がり、深々と頭を下げた。
「こちらこそよろしくお願いします」
.俺も立ち上がって、守口さんの手をとった。



