「お前、変ったな」
「はあ?」
「お前はいつも俺のことを怖がっていたじゃないか。オドオドして言いたいことも言えずに、困ると黙ってしまって。そのうち逃げていく。いつもそうだっただろう?」

フン。

「一体いつの話をしているんですか?いつまでも子供ではありませんよ」

親父の中では俺はいつもでも10代の反抗期らしい。

「まいい。すぐにでも戻ってこい。それなりのポストを用意するから春までは本社で過ごして、春になったら系列会社を回ってこい。3,4年実績を積んで本社に呼び戻す」
「はあ」

絵に描いたようなコースだな。

「不満か?」

きっと俺が文句を言うと思ったんだろう、親父は俺の顔を見ていた。

「いいえ」

戻ってくるからには覚悟はできている。
それに、大きな舞台で自分の力を試したい気持ちもある。

トントン。
「失礼します」

入ってきたのはスーツ姿の男性。

「お久しぶりです、鷹文さん」
「守口さん」

「お元気そうですね?」
「ええ」

遠慮なく部屋に入ってきたのは、守口一郎さん。
確か、40歳くらいだと思う。
俺が子供の頃から父さんの側にいた、父さんの腹心だ。

「守口をお前につける」
「いや、それは・・・」

正直、俺は守口さんが得意じゃない。

「よろしくお願いします。鷹文さん」
「・・・ええ」

これは監視か?嫌がらせか?

「旦那様、お時間です」
爺が呼びに来た。

「ああ」

どうやら仕事で出かけるらしい。

「遅くならないように帰るから、守口と打ち合わせをしておけ」
「はい」
完全に親父のペースなのがしゃくに障るな。