「お前、髙田と付き合っているのか?」
会議室に入ってまず聞かれたのがそれだった。

「ええ、まあ」
今さら隠してもしょうがない。

「いつから?」
「最近です」

嘘ではない。
6年間もずっと同僚でしかなかった。

「お前達いつも一緒にいたくせに、やっとくっついたかあ。遅すぎるくらいだな」
「そうですか?」

部長がそんな風に見ていたことがびっくりなんですけれど。

「2人とも、人を避けていた感じがあったからなあ」
「人を避けるって・・・私達の仕事は営業ですよ」
人の懐に入って行ってなんぼでしょうよ。

「お前も髙田も絶対に人を入れない部分みたいなものがあるじゃないか、面倒くさい奴らだなって思っていたぞ」
「そうですか?」

そんな風に見られてたんだ。
でもそれって、2人とも秘密を持っていたからかもしれない。

「で、髙田と付き合っている鈴木に聞きたいんだが、」
「はい?」
「あいつはなぜ、このタイミングで会社を辞めるんだ?」
「えっと・・・」

困った。
私に聞かれても困るのに。

「彼は何て言ったんですか?」
それを聞かないと答えられない。

ジーッと私を見た部長。私も見つめ返した。
百戦錬磨の部長に駆け引きしたって勝てるわけはない。わかってはいるけれど、今は鷹文の正念場。ここでひくわけにはいかない。

「ッたく、食えねえ奴だなあ」
苦々しそうに言うと、ポケットからたばこを出した。

「部長、ここは禁煙です」
思わず叫んだ私。
「わかってる。わかっているが・・・クソッ」
辛そうな表情。