翌朝出勤しても、会社に変化はなかった。
事態は悪化もしなければ好転もしていない状況で、みんなの表情も暗いまま。

「おはようございます」
私は精一杯明るく声を掛けた。
「ああ、おはよう」
みんな返事をしてくれるけれど、やっぱり元気がない。

「おはようございます」
駐車場で別れた鷹文も、遅れて入ってきた。

「部長、ちょっといいですか?」
真っ直ぐ部長のデスクに行くと、小さな声で話し始めた。

しばらくして、部長と鷹文は会議室へと向かった。


「あれ、髙田課長は?」
「部長の決裁が急ぐんだけど」
突然姿を消した2人を、みんなが探している。

「なかなか帰ってきませんね」
「そうね」

事情を知らないはずの小熊くんも心配そう。

「一華さん、何か知ってますか?」
可憐ちゃんにも聞かれるけれど、
「いいえ」
知っていても今は答えられない。


しばらくして、鷹文が戻ってきた。
デスクを片付け急ぎの指示を出すと、どこかに電話をしてからまた席を立った。

チラッと私を見て何か言いたそうにしたものの、声を掛けてはくれなかった。

「どうしたんでしょう。随分厳しい顔でしたね」
「・・・そうね」
鷹文にとっても苦渋の決断だから。

「鈴木」
遅れて戻ってきた部長が私を呼んだ。

「何でしょう」
立ち上がって返事をすると、
「ちょっと来てくれ」
と会議室を指さす。
「はい」

何か言いたそうな小熊くんを残して、私は会議室へと向かった。