「突然すみません、鈴木一華さんですよね」
夕食を取るために会社を出た私と可憐ちゃんはビルの前で声をかけられた。

いかにも仕事ができそうな、スーツ姿の女性。
どうやら、私を知っていて声をかけたようだった。

「失礼ですが?」

こんな綺麗な人1度見たら忘れないと思う。
でも、私には覚えがない。

「少しお時間をいただけませんか?鷹文のことでお話がしたいんです」
近くにいる可憐ちゃんを気遣ってか、声のトーンを落として私に聞こえるように話す。

「わかりました」

鷹文のことと言われたら逃げるわけにはいかない。話を聞くしかないだろう。

「可憐ちゃんごめん。食事はこの次にして」
両手を合わせてみせた。

「いいですよ。でも、大丈夫ですか?」
心配そうな顔。
「うん、私は平気」

ごめんね埋め合わせは必ずするからと可憐ちゃんには何度も謝って、私は美女と2人駅の方へと向かった。