私も急いで準備をし、鷹文と共に車に乗り込んだ。

「ネットの書き込みのこと、聞いた?」
2人になった車内で、思い切って聞いてみた。

「ああ。朝の会議でも話題になっていた」
「そう」
さすがに知っているわよね。

「そんなに心配するな。会社なんて良かったり悪かったりの連続だ。ここまできたからもう安心なんて状況はない。常に攻めていなければ、衰退していくし、やり過ぎると足元をすくわれる。お兄さんもお父さんもその辺のことは良くわかっていらっしゃる」
「うん」

鷹文って経営者みたいなことを言うのね。
きっと私を気遣ってくれているんだろうけれど、すごく堂に入っている。

「しばらくは忙しくなるな」
寂しそうな顔。

「会えないよね」
「ああ、時間ができたら連絡するよ」
「わかった」
私だって、鷹文の足を引っ張るつもりはない。

ブブブ。
鷹文の携帯が震えた。

「ちょっとごめん」
と、車を路肩に着け携帯を見ると、一瞬渋い表情になった。

「もしもし」
私から顔を背け、窓を見ている。

「ああ、ああ、それは・・・、うん。わかった。じゃあ、今夜。ああ、また連絡する」
電話を切って車はまた動き出した。

「仕事?」
つい、聞いてしまった。

「昔の友人だ」
「白川さん?」
「イヤ、潤じゃない」

ふっと、嫌な予感がした。

「・・・女の人?」
「えっ」
動揺しているのはイエスって事。

「今回のことで情報があるらしい」
今回のこと?
「その人に会うの?」
「そうだな。情報がなければ全容が見えてこないし、全容が見えなければ対策が立てられない」
確かにそうだけれど・・・

「安心しろ、会社の窮地になるようなことにはしない。俺が必ず守るから」
「鷹文?」
まるで、黒幕を知っているような口ぶりじゃない。

「そこの駅でいいか?」
「うん」
それ以上のことは聞けなかった。

しかし、その日の夕方意外な人から電話があった。