「一華さーん」
デスクに戻ると可憐ちゃんが寄ってきた。

ミーティングには事務方の子は出ていなかったから、何があったか聞きにきたんだろうと思った。
けれど、

「見てください。これってうちの会社ですよね?」

見せられた携帯には、会社名こそ伏せられているが、うちの会社だとわかる悪意ある書き込みが並んでいた。

「何これ?」
「うちから商品を入れている企業の関係者って体で、品質が悪くて使い物にならないとか、営業の態度が最悪とかって書かれてます」
「ふーん」
「それも一件じゃないんですよ」
んん?
「どういうこと?」
「こういう書き込みって、必ずあるんです。いいと思う人がいれば、悪いと思う人もいるわけですから。でも、極端に増えてるんです」
どうして?
「何かあるの?」
「わかりません。でもこういう場合、うちの会社に問題があるか、もしくは嫌がらせか」
「嫌がらせ?」
「ええ。でももし嫌がらせなら、必ず首謀者がいることになりますが」

首謀者ねえ。
誰か個人を恨むならまだわかるけれど、うちの会社をって・・・

「なんだかイヤな感じですね」
「そうね」

取引停止とか、ネットの書き込みとか、偶然にしては重なりすぎ。

「鈴木、もう出られるか?」
え?
鷹文は、すでに社用車のキーを手にしている。
「課長も行くんですか?」
「ああ。ここは部長に任せて、俺も取引先を回る。車で行くから、途中まで乗せてやるよ」
「じゃあ、お願いします」