誰もいない寝室に1人残された私。

「鷹文」壁に向かってもう一度呼んでみた。
なんだかとっても恥ずかしくて、くすぐったい。


「シャワーどうぞ。時間ないから、急げよ」
「うん」

なかなかベットから抜け出せなかった私も、彼から借りたスウェットを着てシャワーに向かった。

こうやって男の人の部屋で朝を迎えたのは初めての経験。
正直、どうしたらいいのかわからない。
化粧品だってそんなに持ってきていないし。服もしわしわ。それに、朝食の用意とかしなくていいんだろうか?
そんなことを考え出したら急にせわしなくなって、私は急いでシャワーを出た。


「あれ、早かったな」

リビングに戻ると、スーツに着替えた鷹文がいた。

「随分早いね」
まだ出社には時間があるはずだけれど。

「何か食うか?」

見ると、コンビニの袋にサンドイッチとおにぎりが入っている。

「買ってきてくれたの?」
「ああ。時間がないから、適当に食べてくれ」
「う、うん」
何をそんなに急いでいるんだろうか。

「荷物はこれだけだよな?」

コーヒーを飲もうとした私の横で、すでにカバンを抱えている。

「うん」
「じゃあ、行くぞ」
「はああ?」

行くぞって・・・。
唖然としている私の手を取り、歩き出した。