「少し飲むか?」
「いいわね」

冷蔵庫にあったチーズと、乾き物のつまみ、後はワインを出してきた。

「乾杯」
「いただきます」
チーン。
グラスが音をたてる。

「いつから知ってたの?」
「あの接待の翌日、専務に呼び出された」

「へー。兄さんが。驚いたよね?」
「まあな。でも、色んな事が腑に落ちた」
「色んな事?」
「ああ、入社したての頃自宅通勤だって聞いて、住所は高級住宅地だったからきっといいとこのお嬢なんだろうなって思っていたし。時々やたらと高い服やバックを持ってたじゃないか。きっと何かあるなとは思っていた」
「フーン、さすが鋭いわね」

そうかなあ、ちゃんと見ていれば気づくと思う。
育ちっていうのは隠したって出てしまうんだ。

「あ、そうだ」
鈴木が声を上げた。

「何?」

「私、白川さんに付き合いましょうって言われたんだけれど」
「はあ?聞いてないし」

「じゃあ、本気なのかなあ」
首をかしげながらワインを口にする。

「潤は、やめとけよ」
「えー何で?」
「だって俺の親友だぞ。お前、付き合ってる男の親友と・・・って、イヤじゃないの?」
「はああ?」

バンッ。
鈴木がクッションを投げてきた。

「危ないなあ」
「変なこと言うからでしょ?」
「事実だろ。俺とお前は」
「ああああー、うるさい」
耳を塞ぎながら叫びだした。

ククク。かわいいなあ。子供みたいだ。

「なあ、キスしていい?」
「えっ、もう酔ってるの?」
「ああ」

そっと頬を包み込むと、俺の方から唇を重ねた。

「う、うぅーん」
何か言いたそうな鈴木だが、今は言わせてやらない。

できることなら忘れてしまおうと思ったが、できそうにもない。
あの潤にまでヤキモチを焼く俺って、相当ヤバイ。

「今夜は泊ってもいいでしょ?」
ちょっとお酒が入ったトロンとした目で聞かれ、
「いいよ」
と答えてしまった。

仕方ない、明日の朝家まで送ろう。
きっと叱られるだろうが、それでも今夜は帰したくはない。