俺はプライドの高いわがままな人間だ。自分でもその自覚がある。
人に動かされるのは嫌いだし、こうと決めたら絶対に諦めない。
諦めるくらいなら、最初から手を出さないだろう。負けるくらいなら、参戦しない。
小さい頃から俺はそんな子供だった。
それが許される環境に育ったのも事実だ。


ピコン。
ピコン。
会議のため切っていた電源を入れた瞬間、溜っていたメールやメッセージが送られてきた。

まずは、
『わしだ。一体何度連絡をすれば返事をよこすんだ。お前がそのつもりならこちらにも考えがあるが、それでいいのか?折り返し連絡をしろ』
言いたいことだけ言って切れた親父からのメッセージ。
最近は毎週のように掛かってきている。

そして、
『潤だ。突然だが、今日の夕方から一華ちゃんを貸してもらう。病院のハロウィンパーティーを手伝ってもらおうと思っているから。黙っているのもイヤだから、一応報告しておく』
わざわざ送りつけられた余計なメール。

ただでさえ鈴木に怒っていた俺は、ますます不機嫌になった。

6年も一緒に働いてきた同期、鈴木一華。
仕事熱心で、正義感で、不器用だけれどずるいことはしない。
誰よりも信用できる仲間だと思っていた。
しかし、ちょっとした弾みから、ただの同僚ではなくなってしまった。
俺は今、そのことに苦しんでいる。

「髙田課長」
席に座る暇もなく、部長に呼ばれた。

「はい、何でしょう?」
デスクまで行き部長の前に立つ。

「鈴木と何かあったのか?」
「は?」
言葉に詰まった。

「自分でもわかっているはずだろう?職場の空気が読めないほどお前はバカじゃないよな?」
「・・・」

きっと、俺の朝からの態度のことを言っているんだろう。
不機嫌全開で当たり散らしていたからな。