「仲がいいんだね」
「はあ?白川さん話を聞いてました?喧嘩したんです。嫌いだって言われたんです」
「嫌いな奴にわざわざ『嫌いだ』って言うわけないじゃない」
メインの肉料理を口に運びながら、あっさり言われた。

「・・・」
確かに。

よく考えてみれば、髙田は朝からおかしかった。
顔色も悪かったし、ずっと不機嫌だった。
よほどのことがない限り、あんな態度をとる人間じゃないのは私が一番よく知っているのに。

「彼のこと、好きなの?」
「えっ・・・わかりません」

これは、正直な気持ち。
もちろん、嫌いではない。でも、好きだと言ってしまうだけの覚悟もない。

「一華ちゃん、俺と付き合ってみない?」

「はあぁ?」
フォークにのっていたミニトマトがぽろりと落ちた。

突然何を言い出すんだ。

「難しく考えずに、時々食事に行くくらいでいいよ。人に話せば、少しはすっきりするだろうし、何か見えてくるかもしれないよ」

そうかなあ、余計にこじれる気がするけれど。
それに、

「白川さんもお見合いを壊したかったんですよね」
昨日はそんな話で別れた気がするけれど。

「確かに、今のところ結婚する気はないからね。でも、一華ちゃんに興味がわいたんだ」
「興味ですか」
ただ単に面白がられているだけの気がするけれど。

「一華ちゃんは、このままでいいの?」

え?

「せっかく健康で、好きなことをして生きられるのに、もったいなくはない?」

白川さんはずるい。
今日の私は病院でたくさんの子供達と出会った。みんな楽しそうではあったけれど、病気と闘いながら一生懸命生きていて、その姿に少なからずショックを受けた。
もっと真剣に生きなきゃいけないと思った。
そんな気持ちがわかっていて『このままでいいの?』なんて聞くのは卑怯よ。

「お互いに好きな人ができるか、相手を嫌いになるまで、時々会って欲しい」

「・・・」
私は返事をしなかった。
だからといって、拒否する気持ちにもなかった。

黙ってしまった私の反応をイエスと理解した白川さんは、
「また誘います」
と満足そうな顔をした。