私は小熊くんの電話を奪った。

「もしもし田中工場長。お久しぶりです、鈴木です」
『ああ、君か』
うわ、声がすでに怒ってる。
さあどう話そうかと思っていると、
『一体どうなっているんだ。商品が2日も遅れているぞ。昨日の夜にはかならずって言うから待っていれば、今朝も来てない。このままでは今日の午後にラインが止る。どうするつもりなんだ』
いつも以上に強い口調。

えっ、製造ラインが止る?
それは・・・マズイ。

24時間で動いているラインが止れば、損失は莫大なものになる。
その原因がうちの商品が届かなかったからとなれば・・・小熊くん1人の責任ではすまない。
頭を下げて終わるような話ではなく、損失補填って事になるだろう。
下手すれば取引停止って可能性も十分ある。

「申し訳ありません。再度確認いたしまして、早急にご連絡いたします」
「連絡は必要ない。早く届けてくれ」

「・・・わかりました」
そう返事をするしかなかった。

「必ずだぞ」
「はい」
もちろん何の根拠もない。
でも、なんとかするしかない。

何度も何度も頭を下げ、お昼までには必ずと約束して一旦電話を切った。