「でも、チーフは違います」
「はあ?」

なに、私の悪口を言うつもり?

「いつも一生懸命で手を抜かないのは一緒ですが、不器用すぎます。危ないなと思ったらもう転んでるし、自分が困るってわかってるのに、仲間を助けようとしたり。とにかく危なっかしいんです」
「悪かったわね。落ち着きがなくて」

小熊くんにここまで言われる覚えはないんだけれど。

「でも、俺は好きですよ」
「す、す、すす・・・」
「何動揺しているんですか?人としてって意味です」

ク、クソ。小熊の奴。

ゴク、ゴク。
私はテーブルに置いていた水を一気に飲み込んだ。

「課長は俺のあこがれで、目標です。チーフは、」
「もういい」
聞きたくない。

「これ以上言ったら、髙田に言いつけるわよ」
「それは、やめてください。ただでさえ今日は機嫌が悪いのに」
小熊くんが慌てている。

フフフ。
まだ私の方が強いんだから。お姉さんをなめるんじゃない。


その時、
ブブブ。私の携帯が鳴った。

「はい、鈴木です」
『髙田だ』
「どうしたの?」
こんなタイミングで電話なんて珍しい。

『小熊と一緒か?』
「うん」
『すぐに帰ってこい』
「今、お昼を食べてる所なんだけれど、何かあったの?」
『いいから、今すぐに帰ってこい』

プツン。
電話は切れてしまった。

「課長ですか?」
「うん、すごく急ぐみたい。戻ろうか?」
「はい」

かき込むようにお昼を食べ、私と小熊くんは会社に戻った。