「いい加減にしなさい。私はあなたの元上司だし、小熊くんのことを真面目ないい子だと思っているわ。でもね、相手が対応に困るようなことを平気で言ってくるところは、好きになれない。直しなさい」

このままじゃ、きっと小熊くん自身が困るときが来るから。

「それ、課長にも言われます」
悪びれもせず、ご飯を口にしている。

全然反省してないじゃない。

「じゃあ、なおす努力をしなさいよ」
「してますって。課長の前では余計なことは言わないようにして、話をするときも一拍おいてもう一度考えてから口にするようにしています」
「ふーん」

のわりには、『かわいい』なんて台詞を平気で言ってしまうわけだ。

「課長とチーフは違うんですよ」
「何がよ」
つい、口を尖らせてしまった。

「課長は俺のあこがれなんです。最初は仕事ができてかっこいい人だなってくらいにしか思ってませんでしたけれど、一緒の働いていくうちの本当にすごいって実感したんです」
「たとえば?」
なかなか、こうして髙田の評価を聞く事なんてないから興味がわいた。

「まず、仕事に手を抜きません。楽をしようとしません。俺から見るとわざと面倒くさい方を選択しているようにさえ見えます」
「うんうん」
私も時々そう思う。

「人の悪口を言いません。誰にでも平等に接して、自分が見たものしか信じません」
「そうね」
どんなに誤魔化しても、髙田には見抜かれる気がするもの。

「課長の真っ直ぐで、妥協をしない生き方をかっこいいと思います」
そう言った小熊くんの目はキラキラしていた。

すごいなあ、部下からこんなに慕われる髙田って本当にいい男なのね。