2ヶ月ほど前にできた定食屋さん。
魚と手作りの和食が人気で、いつもビジネスマンで賑わっている。

「はあー、なんとか座れましたね」
「そうね」

今日は月に1度の半額クーポンの日だそうで、いつにも増して混雑していた。

「何にしますか?」
「あじフライ定食」
「ああ、俺もそれ」

「あじフライ定食を2つお願いします」
お水を持ってきてくれた店員さんに注文をした。

「そういえば、課長と何かあったんですか?」
「何で?」

「だって、あそこまで機嫌の悪い課長ってレアですし、チーフがらみかなって」
「だから、何で私なのよ」

お水を一口口に運び、私は小熊くんの視線を避けるように携帯を手にした。

小熊くんって、本当にいい子なんだけれど、少し空気が読めない。
わざとなのか、鈍感なのか、平気で人の痛いところを突いてくるようなところがあるから。時々困ってしまう。


「お待たせしました」
混んでいる分回転も速いようで、あじフライ定食はすぐに運ばれてきた。

「うわーうまそう」
「本当だね」

衣が立っていて見るからにサクサク。
ウスターソースを掛けて、パクリとかぶりついた。

う、ううーん。幸せ。

「チーフ、その顔やばいです」
ジーっと私を見ている小熊くん。

「え?私、何かした?」

「違います、かわいすぎます」

はあああ?
思わず、箸を落としそうになった。

ゴホッ。ゴホゴホ。

「もー、小熊くんふざけないで。気管に入りそうになったじゃない」
「ふざけてません」
真顔で私を見ている。

だから、それが困るんだよ。