「それと、」
「まだあるんですか?」
「先週末期限の書類が残っているようだが、今日中に出してくれ」
「はあ?」
声が大きくなり、思わず睨んでしまった。

「何だ、文句か?」

「ええ。先週は課長の代わりにずっと外回りをしていたんです。どこに書類の整理をする時間があったって言うんですか?」

そんなこと、髙田が一番よくわかっていることじゃない。

「それはそれだ。やることはやってくれないと困る。外回りはサブに任せて、事務処理を片付けてくれ」

「はあ?」

冗談でしょう。
何でいきなりそんなことを言うのよ。

もう話は終わったとばかり、パソコンを叩きだした髙田。
私の方は納得なんてできない。

「私、何かしましたか?」
声を小さくして尋ねてみた。

「何かした覚えがあるのか?」
「いいえ」

でも、絶対おかしい。

「いいから、仕事をしろ」
不機嫌そうに言われ、渋々席に戻った。

一体何なのよ。これは嫌がらせ以外の何物でもない。
私、そんなに怒らせるようなことをしたっけ?

うーん、週末まで髙田は普通だった。
土曜日も楽しく過ごしたし、付き合うことはできないけれど好きだって言ってもらってうれしかった。
昨日も、偶然本屋で会って・・・ああ、白川さん?まさか、私のお見合いが気に入らないとか?
んな、バカな。
私に誰か特定の人ができても邪魔はしないって言ってくれたじゃない。
でも、他に思い当たらない。それとも、体調が悪くて八つ当たり?
髙田はそんなことする人じゃないと思うし、当たるなら私よりも小熊くん辺りにきそう。
やっぱりおかしいよ。
ブツブツと独り言を呟きながら、それでも私はデスク仕事を片付けるしかなかった。