「と言うわけだ」
潤は鈴木とのいきさつと、今日のことをかいつまんで話してくれた。

聞きながら、俺は無性に腹が立った。
何にでも猪突猛進で、無鉄砲にぶつかっていく。それが鈴木の長所だと思う。
でも、今は腹立たしい。
頭の回転が悪いわけでもないし、空気を読めないほど鈍感なわけでもないのに、なぜ肝心なときに相手の気持ちが理解できないのか。

ああーー、腹が立つ。

「そんなに怒るなって、一華ちゃんなりに一生懸命なんだから」

この期に及んで、いきなりいい奴になろうとする潤。お前が一番悪魔なんだよ。

「何が一生懸命だって?いい加減にしろ。こっちはいい迷惑だ。ああー、もう」
つい声を上げてしまった。

絶対に許さない。明日の朝呼び出して、山のような書類仕事を回してやる。
当分外回りにはでられないようにして、泣かせてやる。
あれだけ何もするなって言ったのに、コソコソしやがって・・・

「鷹文。お前、変ったな?」

はあ?
突然言われた言葉に俺は固まった。

何をいきなり。
俺が変ってしまった原因を誰よりも知っているのはお前じゃないか。

「変ったのは8年前だ。お前だって知っているだろう」

あの時、俺は1度死んだ。
もがいて苦しんで、やっと今の生活を手にしたんだ。

「一華ちゃんが変えたんじゃないのか?」
潤がジーッと見ている。

「違う」

鈴木は関係ない。
俺はもう、彼女に近づかないと決めたんだ。
彼女を俺の人生に巻き込むわけにはいかない。