俺が家に帰ると
すでに桜さんが
居間でくつろいでいた

「私の店が決まったのよ
ここから近くて、とっても良い場所だったわ」

「そう良かったね」

「バーなんだけど
開店したら瑛ちゃんも飲みに来てよ」

「ああ、もちろんだよ」

俺はスーツを脱ぎに寝室に入った

社長とはうまくいっているのだろう
だからこんなに早く店を出せるのだ

このまま桜さんは
社長と結婚して欲しい

それで俺のことを捨てて
新しい人生を歩んでほしい

「瑛ちゃん?」

ドアから桜さんがのぞいてきた

「何?」

「ううん
元気ないなって思ったから」

「桜さんが元気すぎるんだよ」

「そうかしら?

これからは忙しくなるけど
浮気してるわけじゃないから」

桜さんはにっこりと笑った

嘘つき

浮気してるじゃないか
俺が何も知らないと思っているの?

若社長と浮気して
店も持つんだろ?

俺はスーツをしまうと
ベッドに倒れこんだ

俺の人生って何?

疑問に思ってしまう

スミレを桜さんから守るためとは言え

心を偽る生活を
難なく送れるわけじゃない

俺はこれからどう生きていけばいい?

こんな不安と苛々が混じりある夜は
スミレに会いたくなる