「いらないって言ってたけど
気になっちゃって

迷惑だったら
持ってかえるよ」

せっかく作ってくれたのに
持って帰れなんて言えないよ

俺は首を振って
スミレの弁当箱を
受け取った

「ありがとう」

「瑛ちゃんが
喜んでくれるなら
私…」

頬を赤くするスミレは
可愛かった

「お母さん
いつも、帰りが遅いの?」

「いろいろ
今日は早く帰ってくるって
言ってたけど

どうだろうね」

「パートって何をしているの?」

「俺もよく知らないんだ

桜さんが勝手に決めてきて
通い始めたから
事務って言ってたけど

どんなことをしているのか…
さっぱり」

「昨日は
ごめんなさい」

スミレが頭をさげた

「いいよ
ちゃんと帰れたなら

それで」

「瑛ちゃんは
つらくない?

お母さんと一緒で
苦しくない?」

「平気だよ
俺が選んだ道だから」

スミレが心配しないように
笑顔をつくって見せた

本心を言えば

きっとまた
抱き合ってしまう

そしたら
今度こそ
離れられない関係になってしまう
気がする

それはいけない

俺は
桜さんと一緒に
生活すると決めたんだ