「なんなんですか？」

男たちに囲まれた桜さんが
甲高い声をあげた

「係長、ありました！」

ソファの上にあった鞄の中身を
見た男が大きな声を出した

「そのお金は
社長からもらったのよ

触らないで！」

係長と言われていた男が
桜さんの腕を掴んだ

「『貰った』のは知ってますよ
ビデオで見ましたから

でも勝手に持ち出しちゃ
いけませんよ

社長から被害届が出てますよ」

え？
被害届？

俺は眉間に皺を寄せると
桜さんの顔を見た

「桜さん？」

「ちょっと…待ってよ
被害届って何？
私は社長に、金庫に
店の契約金が入ってるから
持って行っていいって
言われてたのよ」

桜さんは
警察官に掴まれた腕を大きく振った

警察官は
暴れる桜さんを抑えつけた

「痛い！
離してよ

私は何も悪いことは
してないわ
だって社長が…」

「詳しい話は
警察でしましょうか」

「ちょっと！
瑛ちゃんは
信じてくれるよね？

私、嘘は言ってない」

桜さんは
俺の目を見て
必死に話しかけてきた

「俺…は
何も知らない
桜さん、わけがわからないよ」

俺は首を振った