好きな人はたとえどんなに重大な事情でも、手を離す考えは古海には一切の余地もなかった。




「絶対帰ってくる。紫水くんは、そんなに安易に私のこと、手放せない!」




分かっていた。




理由を聞かずとも自分のことを思ってだということは。




デートで別れ話をするなんて、ましてやあんなにも悲しい顔をしながらなど、絶対相手は忘れられない存在だという象徴。