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 人類の希望。その名を轟かせた物質「C-7」が発見されたのは、元号が変わる前のことである。
 ある特定の場所、特定の環境下で栽培された紫の花を咲かせる植物の液胞部分から採取されたこの物質は、生命に関する人類の常識を覆すものであった。

 花の栽培所での第一発見者は、数種類のうち一つの株の花が「枯れない」ことに気がついたのである。実をつけることもなく、萎れることもない、異質なものである。

 報告を受けた上層部はすぐに研究を開始し、得られた成果により物質を「C-7」と名付けた。研究の結果、C-7を保有できた花は七種類であったためである。

 その後、実行された実験において分かったことはC-7を保有する植物の共通項である。これらの花は、

「いかなる状況下でも適応し、置かれた環境に合わせ自身にとって快適であるように細胞を作り変えている」

「細胞が傷ついた場合、保有するC-7の九割を失わない限り、体細胞の七割を失っていても三時間以内に再生可能」

「快適な環境を作り出すために必要な水、周囲の温度、空気に干渉することができる」

という共通項を持つ。

 これを好機と見た五大財閥を中心とする製薬会社及び企業は、こぞってC-7の開発を進めた。

しかしながら財閥の驚くべき影響力により、結果的に開発はこの五つのグループに独占される。

 そんな情勢の下、C-7を人体に投与することによって全ての疾病に対する治療薬を開発した製薬会社があるという噂が流れた。

人道、倫理観の観点から様々な議論が交わされたこの治療薬であったが「永遠の命」の名を掲げて末期患者や親族によるデモ活動が行われる。

この流れに乗るかと思えた五大財閥は、農作物や資源の持続性を重要とし永遠の命について反対の姿勢をとった。

これにより、このC-7の人体投与に関連した開発は財閥の多大なる影響力により中止したはずであった。