「本当にごめんなさい。あの馬鹿に代わって謝ります」
深々と謝罪する涼さんは、理叶とあまり似ていないと思った。
理叶は例えるなら月のような静、一方の涼さんは太陽の如く動の人間。
似ていないから、気が動転することも震えることもなく落ち着いていられるのかな。
それでも、わたしにとってあの男は恐怖の対象でしかない。
ずっと腰を曲げて謝るこの人が理叶の姉だなんて信じられなくて、あの日の出来事を思い出したくなくて。
「顔を、上げてください……もう過ぎたことですから、涼さんが謝るようなことじゃ……」
か細い声で終わらせようとしたところ、弾かれたように姿勢を戻しギョッとした表情を浮かべる涼さんに、言葉を失ってしまった。
何か気に障るようなことを言ってしまっただろうか。
「……もっと怒っていいのよ?」
「へ?」
「こんな健気な子を傷つけるようなクズ、罵られて当然だわ。
ああ、ちなみに、あのクソ野郎のことなら、あたしがボッコボコにしてやったから安心して」
鼻息荒く言い切った涼さんからは負の感情は感じられない。
わたしにとってはそれが嬉しかった。
誰だって辛いことに直面したとき、いつまでも可哀想にってなぐさめられるより、笑いに変換してもらった方が明るい気持ちになれるもの。
それをごく自然にしてみせる涼さんは、本当に強くて優しい人だ。
だけども「あたし、空手師範代なのよねー」と笑顔で指をゴキゴキ鳴らす仕草は恐ろしいこと極まりない。
確かにこの人なら理叶を殴りかね───否、殺りかねない。
深々と謝罪する涼さんは、理叶とあまり似ていないと思った。
理叶は例えるなら月のような静、一方の涼さんは太陽の如く動の人間。
似ていないから、気が動転することも震えることもなく落ち着いていられるのかな。
それでも、わたしにとってあの男は恐怖の対象でしかない。
ずっと腰を曲げて謝るこの人が理叶の姉だなんて信じられなくて、あの日の出来事を思い出したくなくて。
「顔を、上げてください……もう過ぎたことですから、涼さんが謝るようなことじゃ……」
か細い声で終わらせようとしたところ、弾かれたように姿勢を戻しギョッとした表情を浮かべる涼さんに、言葉を失ってしまった。
何か気に障るようなことを言ってしまっただろうか。
「……もっと怒っていいのよ?」
「へ?」
「こんな健気な子を傷つけるようなクズ、罵られて当然だわ。
ああ、ちなみに、あのクソ野郎のことなら、あたしがボッコボコにしてやったから安心して」
鼻息荒く言い切った涼さんからは負の感情は感じられない。
わたしにとってはそれが嬉しかった。
誰だって辛いことに直面したとき、いつまでも可哀想にってなぐさめられるより、笑いに変換してもらった方が明るい気持ちになれるもの。
それをごく自然にしてみせる涼さんは、本当に強くて優しい人だ。
だけども「あたし、空手師範代なのよねー」と笑顔で指をゴキゴキ鳴らす仕草は恐ろしいこと極まりない。
確かにこの人なら理叶を殴りかね───否、殺りかねない。



