「いらっしゃい」



翌日、剛さんの車で志勇の『野暮用』のため組の車で訪れた、見慣れない街の美容院。


出迎えてくれたのは、プラチナブロンドのロングヘアに、黒縁メガネの美女。


背が高くて、ギャルっぽいのに清楚感があるのが不思議。



「ゲッ、あんたも来たの?」

「誰がわざわざてめえに会いに行くんだ。勘違いすんじゃねえ」

「あら、いきなり喧嘩腰なんて上等じゃない。
こっちは毎週火曜にあるはずの定休日を奪われたってのに」



女の人は、隣に立つ志勇を見るなり眉間にシワを刻む。


だけどその間に悪い雰囲気はなくて。


瞬時に察したのは、恋人と紹介されても違和感がないくらい、親密な関係だということ。



「壱華」

「……」

「壱華、嫉妬か?」



……そうなのかもしれない。見ず知らずの女の人を、羨ましくも妬ましいと思ってしまった。


志勇は誰のものでもないのに、志勇と話す彼女に嫉妬してしまっている。



「ククッ、ヤキモチか」



しかし、志勇は迷惑というよりむしろ嬉しそうにわたしの頭を撫でる。




「安心しろ、こいつは男だ」

「え!?」



そして、とんでもないことをカミングアウトしてきた。


こんなに綺麗で細くて、見るからに女子力高いのに、男!?ニューハーフなの?



「ちょっと、変なこと吹き込まないでくれる!?
あたしは生粋(きっすい)の女だから!」

「あ?お前、性格はまるで男だろうが」



ああ、性格が男勝りってことか。びっくりした。てっきり男性なのかと。



「剛置いていくからな。壱華に変な真似したら許さねぇぞ」

「はぁ?あんた女にも嫉妬するタイプ?めんどくさい男ね~」



すると志勇は美容院に残るらしい剛さんを指差し───



「じゃあな壱華、終わり次第戻る」



颯馬さんを連れて颯爽と去っていった。