すぐにオーナーが対応に当たる。


1分も経たないうちに通話を終えたオーナーは、理叶に向かって声を放った。



「理叶、オヤジがお呼びだ」

「……親父?」



ようやくわたしから目を離した理叶。


次第にもうひとつの顔が覗いてくる。



「今すぐ本家に帰ってこいとのお達しだ。オヤジと姐さんが待ってらっしゃる」

「また急だな。こんな時間帯に……」



彼は、暴力団、ヤクザの息子。


まだ本部登録をしていないからヤクザではないらしいけど、いずれ跡を継ぐらしい。


オーナーは理叶のお父さんのところに所属するヤーさん。


つまりこのバーはヤクザが経営する店だ。


そのため、理叶と光冴は高校生にも関わらず、“関係者”だからこの店を自由に行き来できる。


ちなみにわたしは、危険が伴うけれど融通がきくし時給が高いため、ここでバイトを続けている。



「いいから行くぞ。(すで)に車を店の前に手配してある。俺もそこまで送るよ」

「……分かった」