こいつを俺のものにするにあたり、調べたことは山ほどある。


壱華の過去は悲しいものだった。


3歳のころ両親が交通事故で亡くなり、叔父のもとに身元を引き取られた。


しかし壱華の様子から見ると、継母に酷い虐待を受け、義理の姉妹からは人として扱われない日々だったということがうかがえる。


何より、身体に残された傷がそれを物語っていた。


中学校を首席で卒業しているにも関わらず、最終学歴は中学卒業まで。


かなり隠蔽、捏造され真実にたどり着くまでだいぶかかったが、確かな情報だ。



「壱華、お前の過去に何があった」



しかし、壱華が自分から語ろうとする気配はない。


だから尚更知りたい。



「お前の口から聞きたい。聞かせてくれ」



真正面から告げると、壱華は困惑した表情を見せながらも、俺の胸にそっと体重を預けてきた。


壱華はこの体勢が一番落ち着くらしい。


そんな壱華の答えが聞きたくて、少し、追い討ちをかけた。



「心配するな。俺はお前を手放したりなんかしねえから」



そう、お前は俺のものだ。


北との関係が深刻化しようが、西を敵に回そうが、壱華は俺だけのもの。


決めた。お前を『捨て駒』には使わない。


俺はお前を離さない。