気がつけば俺の手は、輪郭をなぞるように壱華に触れ、うつむいている顔を上げ目線を合わせていた。


強制的にその形をとると、目を丸くして俺を見る。


しかし、数秒も満たぬ内にゆらゆら瞳を揺らし、壱華は視線を隅に追いやった。


……いつまでそうやって逃げるつもりだ。



「目を逸らすな」



至近距離で命令すれば、さすがの壱華も逆らえない。


そして壱華は初めて、しっかりと俺を見つめた。


見つめ合う瞳の奥に感じ取ったのは、怯え。


だがそれは俺に対しての感情ではない。


見えない何かに、支配されている。


まただ。


また、俺を見ていない。



「……何が怖い?」



目の前には俺しかいないのに、何がそんなに怖い。



「お前は何に怯えてる?」