その場にいた光冴とオーナーが、何事かと彼の方へ振り返る。


すると理叶はわたしの顔を指差し───



「それ、誰にやられた」



険しい表情をしてカウンター席から立ち上がった。



「え……」

「頬に指の跡がくっきり残ってる。誰にやられた」

「……」




……しまった。


おばさんに引っ叩かれて、なんの処置もしていなかったんだ。


とっさに長い髪で顔を隠すように下を向いたけれど、もう遅い。



「言え、誰がお前を傷つけた」



理叶はほんの些細(ささい)な頬の傷に気づくほど、他人の変化に敏感で、観察眼が優れている。


一方で賢い頭脳を持ちながら、高身長に引き締まった身体、高校生とは思えない体格に恵まれている。


そんな彼からにじみ出る雰囲気は、威圧的で冷たく、逆らえない。






さすが、東日本トップの暴走族の総長というだけある。