歩みを進め、黒革のソファーの前に立ち、見知らぬ2人の男性を確認するより、まず荒瀬さんに一礼した。



「服、ありがとうございました」

「ん?ああ、似合ってるよ。サイズもちょうどいいな」



お礼を言うと彼は素直に褒めてくれて、少し嬉しく感じた。


のけ者にされて(さげす)まれてきた人生だから、ほんのちょっとの優しさにでも心が揺らぐ。


わたしの悪いクセ。



ところで、ひとつ疑問があったんだ。


下着までピッタリだったのはなぜかという疑問が。



「……」

「……変な勘違いすんなよ。元のサイズから判断して買っただけだ」



ちょっと冷たさをにじませた目をしていると気づいたらしく、冷静に教えてくれた。


なるほど、そういうことなら納得───



「気に入ったろ?俺が選んだランジェリー」



したのに、その一言でまた疑問が生じた。


あんな趣味悪い下着を選んだのは荒瀬さんだったの!?


それより、人がいるのにそんな話して。


この人達に変な誤解されたらどうしよう。



「ふはっ、挙動不審になり過ぎだろ」



表情を固めたまま、大慌てのわたしを見ていたずらっぽく笑う荒瀬さん。


そりゃ焦りたくもなります。