「お前の体を傷つけて悪かった」

「え……」



手を放し、真剣に対面する荒瀬さん。


帝王が庶民に謝ってる。



「あ、えっと……別に構いませんけど、着替えても、いいですか?」



信じられない出来事にうまく受け答えができなくて、でもとにかくこの状況から脱出したくなった。


透けてる下着で男の前にいるなんて、よくよく考えてみれば冷静になれるはずがない。


言うと、彼は表情を一変させ、(とが)めるように口を開いた。



「……逃げるなよ」

「はい?」

「一応言っとくが、ここ、13階だからな」



となると、ここはマンションらしい。


さすがのわたしでも脱衣所の窓から逃げようなんて思わない。



「着替え次第来い。俺はリビングにいる」



荒瀬さんは肩越しにそう告げると、やっと脱衣所から出て行った。


……何にしても、襲われなくてよかった。