その真実は、実莉が語ったものと噛み合わなかった。


そこでようやく、あの女はおかしいと疑い始めた。


そんな時だ。音信不通だった実莉から電話がかかってきたのは。




『聞きたいことがいっぱいあるだろうけど、簡潔に話すね』



俺はその会話を録音した。



『あのね、もうキミ達に利用価値はなくなったの。
あ、一応言っておくけど、実莉はレイプなんてされたことないしぃ、家ではママともお姉ちゃんとも仲良いよぉ?』



実莉が初めて見せた本性。


耳につく間延びした声、発言のひとつひとつに、人間の汚い部分が垣間見えた。



『可哀想な子は壱華。だって血が繋がってないお荷物なんて、どこの家庭も必要ないでしょ?だから暇つぶしにいじめてあげてたの。
友達取ってぇ、彼氏奪ってぇ、お姉ちゃんと協力してリンチさせたこともあったっけ?』



こいつは、悪魔だ。


人の皮を被った悪魔だ。


俺はこんな女に簡単に騙されたのだと思うと、自分自身に怒りがこみ上げ通話を切ろうとした。



『でも、遊ぶのも今日まで。
これから壱華は計画の大切な駒になるの。
実莉と、お姉ちゃんと、あの人たちの』



しかし、意味深な言葉を残してから、実莉は高らかに笑い──



『アハハ、じゃあね光冴。簡単に騙されてくれてありがとう。
ぶっちゃけ、壱華の話を私に置き換えた時、一生懸命聞いてた様、すごく笑えたよ。
ほんっと馬鹿だよね。頭悪い男落とすのって簡単すぎて笑えちゃう!アハハハ!』



俺はそれ以上何も言えなかった。


己の無知を、ここまで疎んだことはなかった。




『あと……今日から警察がリーダー狩りを始めるから気をつけてね』




最後にそうメッセージを残し、実莉は俺の前から完全に姿を消した。

聞いた話、今やつは警察に守られながら、前と何ら変わりなく暮らしているのだという。